NPOの総会をどのように開きますか?~茨城NPOセンター・コモンズの事例から

年度末を迎えたNPOが行う「通常総会」「定時総会」
3月末で年度末を迎えるNPO法人の場合、5月から6月にかけて年に1度の通常総会、あるいは定時総会を開催し、会員の皆さんに活動の報告をしたり、新しい計画や予算、役員の変更などについて承認をいただく必要があります。
私自身、役員を務めている団体に加え、ソノリテとして事務代行やコンサルティングでサポートしている団体、特に神山町で活動をしている団体は少なからずお手伝いをさせていただいています。
これまでにもご紹介をしてきましたが、茨城NPOセンター・コモンズは、ソノリテ、そして江崎の原点です。現在はソノリテのクライアントであり、江崎が個人正会員、そしてソノリテが賛助会員として関わっています。その総会に今年も参加いたしました。今回は、「もっと知りたいNPO」のカテゴリーとして、茨城NPOセンター・コモンズの総会を例に、NPOの総会をどのように準備・運営すればスマートなのかを考えてみたいと思います。
会場・資料・スケジュールの工夫
今年のコモンズの総会は、5月24日(土)13時~15時40分、その後懇親会というスケジュールで開催されました。コモンズの事務所は水戸市内にありますが、入居しているビルの会議室は土曜日に使用できないため、千波湖にある旧県民文化会館、(現在のザ・ヒロサワ・シティ会館)を会場として借りての開催となりました。遠方の方や、水戸まで足を運ぶことが難しい方のため、オンライン参加も可という案内が、5月7日に議案書とともにメールで届きました。2週間以上前にお知らせいただけると予定も立てやすく、資料も事前にじっくり読んで当日を迎えることが出来ますね。私も今年は神山に滞在しているスケジュールに当たってしまったので、オンラインで参加することにしました。
複雑な事業内容をどう伝えるか
コモンズは、年間の事業規模が1億5千万円、大きく6つの事業を展開しており、報告資料の分量も膨大です。活動拠点は水戸市と常総市、つくば市にあり、職員数は30名とのこと。決算作業だけでも大変な事務量ですが、事前に顧問税理士さんと打ち合わせを行い、事務局長の大野さんがしっかり準備されていて、非常に安定感があります。
ただ、事業部門は多岐にわたり、各々の専門性が高く、私は25年くらい前から関わっているため内容の理解がありますが、日頃から活動に直接かかわっていない会員さんや支援者さんが、総会資料だけで果たして充分理解できるのかは難しいところです。とはいえ、コモンズの総会資料は、各部門ごとに詳細にまとめられていて、新聞などに掲載された記事が添付されていたり、できる限り会員さんに情報を伝えようとする工夫が随所に見られました。総会当日は、代表理事の横田さんや事務局長の大野さんからの説明に加え、各担当者からも直接の報告が行われました。
「承認の場」以上の意味を持つ総会
コモンズは総会を、承認機関としてだけではなく、会員さんからのご意見や要望の共有の場として大事にしています。特に、NPO法人は会員さんが「お客さん」になってしまわないよう、主体的にかかわれる器であることが重要です。そのため、質疑応答や、出席者の方の発言の時間を十分とれるように配慮されています。それでもなかなかその場でご意見を言っていただける方は多くなく、活発な会員同士の交流を促すにはもう一工夫必要かな、と感じました。
NPOの本来の役割と今後への示唆
そんな中で、今年の総会で印象的だったのは、前代表理事であり、茨城大学名誉教授の斎藤先生の発言です。「コモンズはこれだけの事業規模になり、30名の職員を抱える組織に成長しており、大いに評価できる。その一方で、1億5千万円のうち、大部分が県や国の委託と助成金によって成り立っており、会費、寄付の割合が少ない。これでは、一般的な事業会社と変わらず、自由な市民活動を行うNPOの精神と、コモンズのビジョンを本当に実現できているのか」と問いかけられました。
確かに、国からの委託事業として、生活困窮者の家計支援、常総市での外国籍の子どもを含む0歳から6歳のための保育事業、公立学校における外国籍児童生徒の受け入れ態勢づくりに寄与するグローバル・サポート事業など、それぞれに必要不可欠なセーフティネット活動を展開しており、制度の狭間に置かれた人々への支援や、どこにもないサービスを先駆的に行ってきました。その意義は大きいと思います。しかしながら、会員数の減少や、「中間支援組織」としてNPOの設立や運営をサポートする機能、会員同士で交流や新しい制度作り担う「市民活動の共有地(コモンズ)」としての役割は薄れているのではないかというご指摘には、私も強く共感しました。
コモンズは、2028年に30周年を迎えます。こうした節目は寄付を集めたりイベントを実施したりするチャンスです。私もNPO活動の原点であり、現場で活動を学ぶ場としてのコモンズに対して、自分に何ができるのかを考えていきたいと思います。
「義務」から「機会」へ
さて、表題に立ち返ります。NPO法人の総会は、所轄官庁へ提出する書類の承認を得たり、議事録を作成するためだけのもの、と思っている方はいませんか?中には形だけやったことにすればいい、と思っていたり、誰かにそう助言された、という方もいるかもしれません。しかしNPO法人は、監督官庁からの監督、指導に基づくのではなく、市民への情報公開によって信頼性を担保することで活動を行っていくという組織です。だからこそ、総会という機会を、会員さんとのコミュニケーションや、次の事業を行うためのエネルギーとなるような、そんな機会にする工夫をしてみてはいかがでしょうか。
定款に定められた期限内での開催通知や、定足数・議事の確認といった法令遵守は当然のことながら、それに加えて会員さんや、会員以外の方とのコミュニケーションの場として、総会を生かす視点が求められます。そのためにも、直前ではなく十分な準備期間を確保して臨むことが重要なのは言うまでもありません。