東日本大震災から14年~いわき市視察報告

2011年3月11日、あの日のことは忘れられない。

でも、そこに暮らしている人たちにとってはまだ震災は終わっていないということに、私たちは時々想いを寄せることしかできない。だからこそ、前を向いて何かを始めている、そんな仲間がいることに感謝をしたい。

ソノリテ15周年企画として実施した被災地訪問ツアー。前日の3月10日の夕方から3月11日の2日間、福島県内の各所で活動する人々に出会いました。

※ツアーの様子は後日Tokyo Borderless TVの番組「ソノリテTV」で公開予定です。

+++   +++   +++

2025年3月10日(月)ツアー1日目

<この日の訪問先>

  • 夕方、いわき市、元禄彩雅宿 古滝屋旅館
  • 東京からソノリテスタッフ4名といわき市在住スタッフ1名(+お子さん)で旅館近くのレストランで夕食
  • 2011年当時、茨城NPOセンター・コモンズ職員だった天井さんと合流
  • 古滝屋旅館 原子力災害考証館furusato 見学

茨城NPOセンター・コモンズ職員だった天井さんと再会。現在、マルイ装美さんの浪江営業所で清掃や片付けのプロとして働きながら、そこで暮らす人々に寄り添って暮らしているのだそうです。震災当時は大学を卒業して間もない若者だった天井さん。この14年間の生き方をうかがうと、本当に頑張ってきたんだな、と尊敬の念を抱きます。

この日の宿、古滝屋旅館の館主、里見さんは天井さんも大変お世話になっている方なのだそう。聞けば、この里見さんがまた素晴らしい、地域になくてはならない方でした。創業元禄八年という老舗旅館内に、津波被害、原発によって避難することになった人々の記録を展示する部屋を常設。ボランティアやまちづくりでいわき市にきた若い人たちに宿泊場所を提供したり、若者の集いに旅館を使わせてくださったり。

※古滝屋旅館 里見さんの復興への取り組みについてはこちら

古滝屋旅館 原子力災害考証館furusato
この日、私たち以外にも古滝屋旅館に宿泊されている方々が。夕食の場でご挨拶すると、ご家族を亡くされた方、企業のCSRで視察に来られた方、沖縄から来た方など。3月11日前夜に思いを寄せるさまざまな方が集っていました。

2025年3月11日(火) ツアー2日目

<この日の訪問先>

穏やかな晴天。寒さも感じることもなく、平日のためか静かで、何ごともない日常の一日のよう。しかし、双葉町産業交流センターにいくと献花台が設置されており、報道のカメラもきていて、やはり普通の日ではないのだと、身の引き締まる思い。

原発近くの請戸小学校は震災遺構として当時の被災したままの姿で残されています。あの日、体育館では卒業式の練習をしていたため、卒業おめでとうの横断幕がかかったまま。ソノリテ一行には初めて訪れるスタッフも多く、改めて当時のことに思いを馳せます。

双葉町から少し南下した、大野地区。やっと開通したというJR大野駅の駅前にひろがる「くまSUNテラス」。3月15日オープンした商業施設で、おしゃれな文具店やカフェが準備をしていて少し華やいだムードでした。でも、これまで何もなかったところにやっとこのような施設が建ったのだと聞いて、言葉もありません。

さらに南下。四ツ倉港近くの道の駅で昼食。海が近いだけあって海の幸が新鮮でリーズナブルで美味しい。

午後は2年前にも訪れたいわき市伝承みらい館でピアノコンサートへ。ピアニスト、西村由紀江さんが「奇跡のピアノ」を演奏するコンサートです。「奇跡」の由来は津波に流された大きなダメージから復活したピアノだから。

今年は、その奇跡の復活を担ったピアノ調律師の遠藤洋さんのお嬢様でフルート奏者の優衣さんがフルートを演奏され、美しい音色に多くの方が聞き入りました。

ソノリテTVのインタビューに西村さんは「このピアノは生きてるんです、毎年違う音色を響かせてくれるんです。大切に育てていきたい」と話してくれました。この言葉にまた、ずっしりと重みを感じます。

ピアニスト 西村由紀江さん(左)にインタビュー。インタビュアーはアナウンサーの佐久間香里さん(右)にお願いしました。

そして調律師 遠藤洋さんにもインタビューさせていただくことができました。私たちが大変お世話になっている、カメラマンの三多隆志さんにご紹介いただいてのことです。

遠藤さんは、「最初に目にしたのはピアノに記された"寄贈 四家広松殿"の文字。四家広松さんが、お孫さんが通っていた豊問中学校に想いがあり寄贈されたピアノだと分かり、修復させたいという気持ちが込み上げた」と語られました。いわき市で震災から14年、ピアノとともに地域と向き合ってこられた遠藤さんの言葉は、やはり響きます。「仲間はいたほうがいいじゃない」という言葉は特に心に残りました。

ピアノ調律師の遠藤さんとお嬢様でフルート奏者の優衣さん。
お二人の背景の黒板は、卒業式当日に津波の被害にあった「旧いわき市立豊間中学校」の黒板に残る寄せ書き

最後に、NPO法人底上げさんの活動拠点の一つ、「ならはこどのもあそびば」(楢葉町)にお邪魔しました。NPO法人底上げさんは東北を中心に教育・まちづくり事業に取り組む団体。ソノリテのクライアントでもあります。

今回ご一緒したTokyo Borderless TVのメンバー、誉梓さんによる即興演奏会が始まり、子どもたちも思いおもいにピアノを弾いたり踊ったり、お絵描きしたり。

誉梓さんは、ピアノの上手なかわいいお姉さん。Tokyo Borderless TVで番組を持つアーティストです。

+++   +++   ++++

全町避難が解除されて7年もたつのに、まだまだ復興ははじまったばかり。でもそこで暮らしていこうとしている方、心に大きな傷を負ったけれどもその経験を伝えていかなければ、と語り部として活動をしている方。天井さんのように、人生を、仕事を変えるきっかけになった人たち。

無力だけど、私たちは忘れないで、そして一緒に考えることをやめないようにしたい。そんなことを思った視察ツアーでした。

+++   +++   ++++

▼今回の被災地訪問ツアーの様子の一部は、後日、Tokyo Borderless TV にソノリテTVとして映像を公開する予定です。