ファシリテーションが会議・組織・社会を変える!~第6回・「会議の事前準備」を極める!(その4)
▼議案書は会議の3~5日前に配布・共有しておく!
事前準備の4つめのポイントは、「議案書作成と事前配布」です。
これまでの要領で組み立てた議案を、議案書の形に整えます。ここでのポイントは、
・はじめから議事録と同じ書式に整えておく
・会議の3~5日前を目途に、出席してほしいメンバー全員に配布・共有しておく の2点です。
はじめから議事録と同じ書式に整えておくと、会議の最中に話しあいの内容をリアルタイムでパソコンに打ち込んでいけば、おおむね議事録が完成してしまいますので、会議終了後、あまり間をおかずに議事録を配布することができるのです(議事録の作成法については、後に「土俵のつくりかた」の項で改めて取り上げます)。
たとえば、以下のような書式はいかがでしょうか? 1つのひな形として、参考にしていただければ幸いです。
そして、このように作成した議案書は、遅くとも会議の3~5日前を目途に、出席してほしいメンバー全員に配布・共有しておくようにします。会議の冒頭にバタバタと配布したのでは、書類に目を通すだけで相当な時間を消費してしまいます。それぞれに忙しいメンバーが一堂に会しているのですから、資料の読み合わせなどは行わないですむようにしましょう。
たとえば、私の所属するあるNPOでは、次のようなスケジュールで理事会の準備を進めています。
・理事会の2週間前:招集通知をメーリングリストにて発送。日時・場所・主な議題を明記し、議案の追加や担当事業に関する資料がある場合、および欠席の場合は、会日の1週間前までの連絡を依頼する。
・理事会の1週間前:すべての議案、審議に必要な資料、出欠の状況が整う。議案書の作成作業に着手。
・理事会の3~5日前:議案書をメーリングリストにて全理事に発送。
このように、招集通知や議案書の発送は、メーリングリストやビジネスチャットツールを活用するとよいでしょう。金銭的コストも、時間的コストも最小に抑えることができますし、何よりも、そのツール上で意見交換を行うことができますので、欠席のメンバーが意見を表明したり、理事会当日に話しあうまでもないこまごました案件について処理したりと、さまざまなメリットがあります。たとえば、前述のNPOの理事会メーリングリストでは、1ヵ月あたり約百通のメールが飛び交い、運営の大きな支えとなっています。
また、複数のメンバーで分担・協働しながら議案書を作成するには、クラウド上のサービスを活用すると便利です。いつ、誰がドキュメントを更新しても、常に最新の情報が保たれますので、メールで文書をやりとりするより、はるかにスムーズな作業が可能となります。まだ活用したことがない方は、これを機に試してみてはいかがでしょうか。(つづく)
徳田 太郎(とくだ・たろう) 株式会社ソノリテ パートナー・コンサルタント
1972年、茨城県生まれ。修士(公共政策学)。
2003年にファシリテーターとして独立、地域づくりや市民活動、医療や福祉などの領域を中心に活動を続ける。
NPO法人日本ファシリテーション協会では事務局長、会長、災害復興支援室長を経て現在はフェロー。その他、茨城NPOセンター・コモンズ理事、ウニベルシタスつくば代表幹事などを歴任。
現在、法政大学大学院・法政大学兼任講師、東邦大学・文京学院大学非常勤講師、Be-Nature Schoolファシリテーション講座講師などを務める。
主な著書に『ソーシャル・ファシリテーション:「ともに社会をつくる関係」を育む技法』(鈴木まり子との共著、北樹出版、2021年)。
*本ブログは、『ファシリテーションが会議・組織・社会を変える』(茨城NPOセンター・コモンズ、2013年)に加筆修正を行ったものです。