「全国ボランタリズム推進団体会議」(通称:民ボラ)in茨城

「全国ボランタリズム推進団体会議」(通称:民ボラ)は、ボランタリーに市民活動を進めようとする団体・人々が集う、年一回の相互研鑽の場です。今年は8年ぶりに茨城県で 2日間の日程で開催することになりました。

まず、オープニングセッションでは、ソノリテの会長を務めていただいた、故帯刀治先生が茨城で取り組んでこられた地域研究をご紹介しながら、「市民が主役になる地域づくり」について原口弥生先生、長谷川幸介先生、横田能洋さんの鼎談でスタートしました。原口先生、長谷川先生ともに私が帯刀ゼミで学んだころから存じ上げている、市民活動を長年サポートされてきた先生方です。帯刀イズムが引き継がれていることを感じる、うれしいオープニングでした。

私は、2日目の分科会④:「市民社会は寄付を文化にできるのか? ~寄付のあり方をじっくりと考える~」の進行を担当しました。

はじめに、寄付白書などにも関わっていらっしゃる関西大学法学部教授の坂本さんから、日本の寄付の現状をデータから解説いただきました。

今年は、元日に能登半島地震が発生し、その後も自然災害も多数。そこで最初に私から会場にいる方に今年に入ってからどこかへの寄付を1回でもしたことがある人?と聞いたところ、95%くらいの方が手を挙げておられました。しかし、これは、坂本さんの解説をうかがうと、日本全体の割合とはだいぶ違うんですね。私たちは、仕事柄、いろいろなNPOの活動に触れることが多いですし、自分でも選んで寄付をする機会が多い。けれども一般の市民がみんなそうではない。むしろ大規模災害があったときか、赤い羽根共同募金の集金が回ってきたときか、ふるさと納税しか寄付はしたことがない、という方のほうが多数派です。

分科会の後半は、そんな日本に寄付文化が根付くためには何ができるのか、グループで話し合う、という時間になりました。

枝見さんからの共同募金のお話、早瀬さんからのふるさと納税の問題提起も、寄付を考える参考になったと思います。そして、なにより坂本さんの話は痛快に日本の寄付の状況を説明されていて、同感することばかり。ご関心のある方は坂本さんのご著書をぜひお読みください。

さて、この通称「民ボラ」、このブログのはじめに「ボランタリーに市民活動を進めようとする団体や人々の集まりで、相互研鑽のための勉強会」とご紹介しました。私は、当日の準備をしている運営会議から参加させていただいたのですが、参加者が「ボランタリーに・無償で」ということ以上に、「主体的に、積極的に、対話をしながら」学ぶ場を作ろうとされていることをあらためて感じ取ることができました。新しいNPO活動やソーシャルビジネスが台頭する今だからこそ、本当の意味でのボランタリーな市民活動の学びが重要なのではないでしょうか。

そして、もう1つ感じたのは、このような場に出てくる人は、同じ思想、モチベーションを持ったグループであるということ。つまり、一般社会における市民の割合とは異なる、ということです。帯刀先生も、茨城大学では相当な変わり者だと言われていたと聞きます。大学の中で、教鞭をとり学生へ授業をしていればいい、自分の研究論文を書くことが学内での出世につながる、と聞きますが、先生は真逆でした。大学の中で学べることはごく一部であって、社会に出ていかなければ生きた学びはできない、とか、大工町(水戸の繁華街。歌舞伎町のようなところ)のスナックのママのほうが、大学教授よりよっぽど世間をしっているんだ、水戸の経済のことを知っているんだ、といっておられました。

変わり者だからダメだ、と言いたいのではないのです。そういう方たちと出会えることが、NPO活動を続ける醍醐味だと思います。と同時に、社会全体はそんな人ばかりではない、むしろ市民活動にかかわっていない人のほうが多い、ということを私たちは理解し、それでも強い市民社会をつくるためにできることは何か考えていきたい、と気持ちを新たにした2日間でした。

民ボラ、地味ですが、来年は静岡開催らしいです、よかったら一緒に参加してみませんか?

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▼ 民ボラのプログラムはこちらをご参照ください。

▼ 坂本治也さん(関西大学法学部 教授)のご著書 『日本の寄付を科学する』

▼ 帯刀治先生の足跡をたどる有志の会はこちら