レバノンワインと小さな行動の力 ― ひとり一人ができること ―

こんにちは。ソノリテBokinchan事業のスタッフ Hです。
現在、「NPOサミット2025」の準備も少しお手伝いしていますが、その中で「レバノンワイン」を知りました。
レバノンワインを取り扱うユナイテッドピープル株式会社様より、今回のNPOサミット2025に物品協賛として提供いただけることになったのだそうです。そして、2010年に開催された第1回NPOサミットはソノリテとユナイテッドピープル株式会社様の共催だったのだとも聞きました。
ワインのことはあまり詳しくはなく、レバノン、中東の国だけど地中海に面しているからワインもあるだろうなぁ、ぐらいの知識しかありませんでした。でも、「ユナイテッドピープル株式会社のワインには、深いストーリーがあるんだよ」と聞き、興味を持ちました。
ユナイテッドピープル株式会社という社名を頼りに検索してみると、サイトにミッションとしてこんな言葉があります。
「人と人をつないで世界の課題解決をする」
戦争、飢餓、貧困、気候変動など、世界が抱える問題に向き合う事業を展開しているとのこと。
主な活動はドキュメンタリー映画の配給や制作だそうです。「ワインのはずだけど映画会社?」と少し不思議に思いつつ、映画のラインナップを眺めてみると、見たことのある作品がいくつか。もともと単館上映の映画が好きで、ドキュメンタリーも好きな私にとって、「ワンダーランド北朝鮮」※など、印象に残っている映画もあります。
※「ワンダーランド北朝鮮」、めったに見られない北朝鮮市民の生活が映し出され、そのエコな生活ぶりに驚くとともに、後半ぞっとする場面も…。おすすめのドキュメンタリー映画です。
映画会社が手がける“平和を願うワイン”
さらにサイトのメニューに「WINE」という項目を見つけ、「あ、これだ」とクリック。
そこには「平和をコンセプトにしたワインのセレクトショップ」とありました。
この事業の背景には、ユナイテッドピープルワイン株式会社 代表取締役・関根氏の学生時代の体験があるそうです。1999年、偶然の誘いでガザ地区を訪れた際、「将来は敵をたくさん殺せる爆弾の開発者になりたい」と語る子どもに出会ったといいます。その衝撃的な言葉が、平和や共生について考える原点となり、映画事業を経て、ワイン事業へとつながっていったのだとか。
関根氏が訪れた1999年当時、ガザ地区はイスラエルから徒歩で国境を超えて行けるほど”平和だった”そうです。
今、ニュースで伝えられるガザの状況は、その当時とは比べものにならないほど深刻です。私自身も、何かできないかと考えながらも、自分の無力さを感じることがあります。同じように感じている人は、きっと少なくないのではないでしょうか。
思い出した「ザ・トゥルー・コスト」上映会
このサイトを見ながら、ふと9年前のことを思い出しました。
知人が企画した「ザ・トゥルー・コスト(The True Cost)~ファッションの真の代償」というドキュメンタリー映画の上映会※に参加したときのことです。上映会にはファッションビジネスに関わる人が多く参加していました。私もかつてファッションビジネスに携わっていた一人でした。
※ユナイテッドピープル社は個人が上映会を開催できる仕組みを提供しているそうで、あのときの上映会はこれを利用したものだと今回サイトを見て知りました。
「ファッションの真の代償」という副題が示す通り、低コスト・大量生産・大量消費の裏で起きている環境破壊や労働問題を描いた作品です。
上映後、会場には重たい空気が流れていました。ファッションビジネスに関わる人たちが、見えないふりをしてきた課題を突き付けられ、誰もが「このままではいけない」と感じながらも、「では自分に何ができるのか」と立ち尽くすような感覚。
私自身もその夜ぐるぐると考えを巡らせ、「せめて消費者としての行動を変えよう」と決めたのを覚えています。実際、その日を境に少しずつ購買行動を見直しました。
小さな変化が積み重なって、世界は少しずつ動く
それからの9年で、ファッション産業にはリユースやリサイクルに取り組み、廃棄ゼロを目指す企業・ブランドが増えました。世の中にもそういった取り組みを支持するムードがあると感じます。もちろん、まだ道半ばかもしれません。それでも「工夫もなく大量生産を続けるブランド」が少しずつ支持を失いつつあるのは間違いありません。
あのとき「どうにもならない」と思った社会が、わずかでも変わっている。ひとり一人の思いや小さな行動が積み重なることで、確かに世界は動いているといってよいのではないでしょうか。
ワインを飲むことの先に見えるもの
ユナイテッドピープルワインのサイトには、こんな言葉がありました。
いつか、対立するイスラエル、パレスチナ人たちが、協力し合って作るワインをプロデュースしたいという夢です。どちらか一方の平和ではなく、共に平和に暮らすきっかけとなるようなワイナリーを作りたいという夢です。時間がかかるでしょうけど、実現したい夢です。
確かに、今の惨状を前に「ワインを飲む」という行為が何かを変えるとは思えないかもしれません。けれど、その“夢”を支えるのは、確かに「飲む人の存在」です。誰かが共感し、選び、応援することで、少しずつ希望が形になっていくのだと思います。
一人の力は小さいかもしれません。けれど、その小さな力が集まることで、世界のどこかに希望が芽生えるかもしれない。レバノンワインに込められた思いを知って、改めてそんなことを考えました。
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