NPO法人会計基準策定15周年記念研究会に参加して~2026年1月31日 @早稲田大学

NPO法人は、市民の自由なボランティア活動を促進するために法制化された制度であることは、これまでも何度かご紹介してきました。
市民が自由にボランティア活動を行うために、NPO法人は活動、特にお金の流れについて透明性をもって報告・説明し、情報公開をすることで市民からの信頼を獲得できる――そのように考えられて設けられた制度です。その透明性と信頼性を担保するために必要なのが、「NPO法人会計基準」です。

NPO法人会計基準がどのように策定されたのかは、以前こちらのブログでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。

2010年、白熱した議論の現場

NPO法人会計基準が最初に策定されたのは2010年7月です。1998年に特定非営利活動促進法(NPO法)が制定されてから12年が経っていました。

当時、会計基準協議会の事務局を担っていたシーズ・市民活動をささえる制度をつくる会で、私もメンバーとして事務局サポートをしていました。策定のための専門委員会では、会計学の教授、公認会計士、税理士、NPOの実務を担う方々などが議論を重ね、会場にはその模様を見つめる大勢のオブザーバーが参加していました。毎回、白熱した議論が長時間にわたって繰り広げられ、ものすごいエネルギーと注目が集まっていたことを思い出します。

2017年改正と「募金活動費」をめぐる思い

その後、2011年11月20日に一部改正が行われ、さらに2017年12月12日にも改正されました。特に2017年の改正では、事務局をアットプロ(NPO会計税務専門家ネットワーク)が担当し、ソノリテはその事務局業務を担っていたこともあり、会議の招集、資料の取りまとめ、議事録の作成、パブリックコメントの募集、WEB管理などに関わらせていただきました。

策定委員会の委員長を長年務めてこられた公認会計士の江田さんは、NPOが強く大きくなるためには、補助金に頼るのではなく、寄付などの自己資金を健全に集められる組織運営が必要だと語られました。そして、「募金活動費」という項目を明確に設けるべきだと主張されていました。

しかし2017年改正時には、ケーススタディが十分ではないとの理由で、時期尚早として見送られました。今回の基調講演でも、なぜ募金活動なのかを改めて熱く語っておられました。

会計が現場を映し、税務を動かす

「税務は常に後追いであり、会計は現場がある限り生のデータである。ときには会計処理が実態に合わせて変化することで、税務処理を変えることができる。」

この言葉が、とても印象に残っています。会計は単なる記録ではなく、現場の実態を映すもの。その変化が制度をも動かしていく可能性を持っているのだと感じました。

クレジットカード寄付普及が変えたもの

かつて、クレジットカード寄付は、団体に着金した日でなければ領収書を発行できないという運用が一般的でした。しかし、決済日に債権が確定しているという実態を踏まえ、現在では決済日での領収書発行も認められる解釈が広がっています。

ふるさと納税の普及も背景にありますが、現場の会計実務が実態に即した処理を積み重ねた結果、着金主義の運用が変わっていったと言えるでしょう。

わずか 5%という現実

現在、NPO法人会計基準に準拠した財務諸表の作成は、会計ソフトメーカーの協力もあり、以前と比べてかなり容易になってきたといっていいでしょう。それでも、NPO会計基準を正しく理解して会計処理をしている団体は、まだ多いとは言えません。

茨城NPOセンター・コモンズでは、県内NPO法人の財務諸表分析調査を毎年実施しています。

この調査によると、NPO法人会計基準に準拠した会計処理をしている法人はわずか5%だったとのことです。

「活動計算書」と名称を使い、「NPO法人会計基準によっています」と記載していても、内容が十分に準拠していないケースが多いことが報告されています。基準は存在していても、理解と実践が追いついていない現実があります。

この基準が本当に大切にしていること

NPO法人会計基準は、行政が管理するためのツールではありません。自らの透明性と信頼性を担保するために、専門家や実務家が時間をかけて作り上げた基準です。

物品寄付やボランティア評価益を計上できる仕組みなど、非営利ならではの活動実態を正確に伝えるための工夫が込められています。それは、市民からの信頼を得るための基盤でもあります。

15周年研究会で感じたこと

今回の研究会は、アットプロ理事である公認会計士・金子先生のご尽力により、早稲田大学でハイブリッド開催されました。

会計基準協議会の会員減少や予算の制約など課題はありますが、まだまだ普及率が低いことが確認され会計基準協議会の役割も再認識される研究会となりました。また、基準のメンテナンス(改正の協議)も必要ではないかという声も上がっていました。

世代交代が進む中、新たにNPO支援に関わる企業人や大学院生の参加もありました。懐かしい同窓会で終わらせるのではなく、これからの普及と発展につなげていくことが大切だと感じた一日でした。

「みんなで使う」会計基準へ

みんなで使おうNPO法人会計基準」のWEBサイトは、シーズからソノリテへ移った最初の仕事として私が担当しました。

その名のとおり、みんなで使うからこそ意味がある基準です。

ソノリテでは会計事務代行サービスも行っています。策定時の議論や重要なポイントを理解しているからこそ、実務に即したアドバイスが可能です。会計実務のサポートをお考えの方は、ぜひご相談ください。

 

2017年の会計基準委員会の様子。江田先生をはじめ、いつも熱心に議論をされていました。

全国から集まってこられた参加者の皆さんとの懇親会。懐かしい方、はじめましての方、がおられました。