寄付の対価性について考える

ふるさと納税やクラウドファンディングが大流行しています。

寄付をお願いするときに、ストレートに支援をお願いするのではなく、「寄付をしていただいたら〇〇を差し上げます」という、いわゆる返礼品があるほうがお願いしやすいからでしょうか?

寄付をする人の気持ちはどうなのでしょう?たとえば、24時間テレビのチャリティーTシャツは、売り上げの一部が寄付になるから買うというよりは、タレントさんと同じTシャツを着たい、あるいは、宮崎吾郎さんのデザインしたTシャツがほしい、という気持ちで買う人が多いのでしょうか?

寄付する人が寄付先を選ぶ基準

NPO法人への寄付が税制優遇措置の対象となる、「認定NPO法人」取得の要件になっているパブリックサポートテスト(PST)。このPSTに参入可能な寄付かどうかを判断する基準のひとつが「対価性があるかないか」です。

ところで、この認定NPO法人の税制優遇措置の対象になるかどうか、つまり、寄付者が所得控除や税額控除を受けられるか否かということは、寄付者が寄付先を選ぶ判断にどれくらい影響するのでしょうか?そう質問されたとき、私は「もっとも上位の判断基準ではない」とお応えしています。

たとえば、今も能登半島への水害被災地での活動に寄付を募っている団体は多くあります。今年の元日の地震から復興半ばでの水害。ダブルの被災地となった能登への支援の必要性は誰もが感じ、共感していることでしょう。そんな能登半島支援の寄付において、自分の寄付をきちんと使ってくれるか、被災地支援の実績はあるかなどを気にすることはあっても、認定NPOであるかどうかが一番気になる、ということはないのではないでしょうか。

寄付の定義

さて、ちょっと脱線しましたが、「寄付の対価性」について考えてみましょう。

まずは寄付金の定義について。内閣府が出しているQ&Aによりますと、寄付の定義は「任意性があること」と「反対給付がないこと」です。

「任意性がある」とは、寄付をするかどうかはその人が選べる、そしていくら寄付するかも選べる、ということです。たとえば、「参加費は3000円を寄付としていただきます」というときは、まず3000円と金額が指定されている、さらに支払わなければ会に参加できない。この2点において任意性が無いということになりますね。では「参加費は無料ですが、3000円以上のご寄付をいただけるとなおありがたいです」としてみる。このように払わなくても参加できるけどできれば寄付してほしいな、そして金額もご自身で決めてお願いします、というような言い方になると、任意性が一応は担保されているということになります。

寄付の対価性

もうひとつの「反対給付がない」という定義。これはまさに今回のテーマである「対価性」のことを言っています。たとえば、3000円を寄付した場合に、活動報告書やお礼状、領収書を受け取ることはよくあると思います。その際、ノベルティのようなオリジナルグッズが同封されていることがあります。私も以前つとめていたNGOで、スマホクリーナーとか、付箋紙とかにロゴマークをいれたグッズを作って寄付者やイベント参加者に配布していました。街頭募金で募金箱に寄付をしていただいた方にポケットティッシュを配ったこともあります。これらは、対価というよりは、「おまけ」。または団体のロゴの認知度を上げたいという意図によるもので、一般的に販売価値の無いものといってよく、反対給付にあたらないように見えます。

先日、猫の保護活動をしている団体の方から認定申請についてご相談いただきました。寄付者にかわいらしい猫の写真のステッカーをお渡ししているそうです。可愛い動物の写真は一般的に人気がありますし、可愛い猫のステッカーは、猫好きさんにとってはうれしいプレゼントといえるでしょう。たとえ市場で販売されていなくとも、そのステッカーには価値がありそうに見えます。そのステッカーをお渡ししている寄付が、認定のPSTにカウントできるかどうかは所轄庁の判断によりますが、その寄付を除外してもPSTがクリアできるだけの寄付があるかを確認するほうが安全かな、という話になりました。

なによりも、反対給付と言われて気になるのがこの記事の初めにあげたクラウドファンディングとふるさと納税です。

クラウドファンディングでは「返礼品がある場合は、税制優遇措置の対象にならない」とあらかじめ断っているケースが最近では増えてきました。一方のふるさと納税にいたっては、高額なブランド牛や農産品などの返礼品を目当てに寄付をする人がまだまだ多いのではないでしょうか。それはもはや、「寄付」ではないような…。しかし、ふるさと納税は税額控除対象になり、いまや寄付手段として人気ナンバー1です。

寄付する人の気持ちに立ち返る

法律で定めている寄付金の定義のことはいったん置いておいて、ここで寄付する人の気持ちをもう一度考えてみましょう。

たとえば、今回の能登半島の水害被災地への寄付をしようとした思ったときに、何か返礼品が欲しいと考えるでしょうか?多くの方は自分に見返りがあるかどうかではなく、一日も早い復興を願って寄付をしますよね。

では、A団体とB団体が寄付先として迷っていたとして、どちらに寄付するかの決め手は、その団体の活動内容や情報発信、信頼性で、それらを確認して決断するのではないでしょうか。

クラウドファンディングやふるさと納税のように、何かを提供することを前提に寄付を集めることがNGだと言いたいわけではありません。それは一つの手段なので、寄付つき商品を買っていただくことを堂々とお願いし、資金を集めればよいと思います。ここであらためて言いたいのは、反対給付がなくても寄付は集められるということ。それは、寄付をすることで誰かの役に立っている、社会を変えるアクションをしている、という「手ごたえ」を返すことができるからです。

寄付していただいたら何かをお返ししたくなる気持ちもすごくよくわかります。でも、寄付する人の気持ちをくみとって、「手ごたえ」を感じていただけるにはどんなコミュニケーションをすればよいか、ぜひ検討していただきたいと思います。

それにしても、ユニセフでもマンスリーサポーターになるとエコバッグがもらえるというキャンペーンをやっていてびっくりしました。キャンペーンでどれくらい寄付者が増えたのか聞いてみたいところです。

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