NPOで働く若手人材育成の取り組み

先日、NPOサポートセンターさんが主催する「NPOキャンパス」にゲスト講師としてお招きいただきました。

この講座は、「10代、20代のためのNPOキャンパス~NPOのいろいろな仕事を学び、考え、動き出す」というタイトルで1年間で全12回の授業を行うもので、学生や若手社会人がリアルまたはオンラインで参加しています。私が講師を担当したのはその11回目の授業です。

関わり方の選択肢を広げる

NPOサポートセンターの担当・笠原さんとの事前打ち合わせで「NPO支援をするフリーランスは増えているが、企業として取り組むのは珍しい」とうかがい、なるほどと思いました。

確かに、私がNPOと出会ったのは、NPO法が施行されたばかりの1998年、今から27年も前です。当時は、「NPO」の認知度は低く、たまに新聞に取り上げられても小さな記事になる程度でした。それが今では、学生時代からNPO活動にボランティアとして参加したり、アルバイトをしたり、就職先の候補にもなっているというのですから、時代は変わったと感じます。

しかし、NPOで働くことが選択肢のひとつにはなったとはいえ、企業で働く場合と同じ待遇や雇用条件で就職できるNPOはまだまだ少ないというのが現状でもあります。
その一方で会社員の兼業・副業が一般的に認められるようになってきていますから、NPOに「就職する」だけが選択肢ではない、企業で働きながらどんな形でNPO活動に参加できるのか、NPOで活かせる自分のスキルは何かなど、NPOキャンパスの参加者の方にとって参考になれば、と思って準備しました。

そこで、講義では、ソノリテの起業の経緯、さらにその前の江崎自身の学生時代からの学歴経歴、ミャンマーを支援するNGO時代のさまざまなエピソードなどをお伝えすることが、参加者にとってリアリティのあるヒントになるのではないかと思い、笠原さんの質問にお答えする形で約90分、お話をさせていただきました。

世界の子どもにワクチンを日本委員会での最初の仕事が、郵便局に足をはこんで寄付を振り込んでくれる寄付者に、手書きの領収書を作成して発送することだった、とお話ししたら、みなさんびっくりされていました。決済も領収書もオンラインというスタイルが普及した現在の若者からすると、とてもアナログなことのように感じるのでしょう。でも、郵便振込用紙に書かれてくるちょっとしたコメントにすごく勇気づけられるし、これなんだろう?とコメントに目を留めたことから広がった出会いのエピソードをお話しすると、さらに驚かれていたようです。

※郵振に関するエピソードはこちらでご紹介しています。

「足りないピースを埋める」ように

この日の講座は2部制で、1部が私とソノリテの紹介。2部は鳥取県にある「NPO法人bank up」の中川玄洋さんのお話でした。

鳥取大学の学生さんたちが、地域の農家さんたちをお手伝いする、学生ボランティアの人材派遣のような活動をされているそうで、非常に精力的に活動されている様子がうかがえました。とはいえ、神山町で若者と地域とのマッチングをいろいろな世代で行っているのを見てきた経験から、簡単ではないハードルもあったのではないかなあ、と想像を巡らせていました。質問させていただくと、やはり、仲介役の大人(主に中川さん)がいろいろな面で目配り、気配りをされていることがわかりました。

NPOサポートセンターさんが企画するNPOキャンパスや、NPO法人bank up の中川さんのような活動によって、10代、20代のころからNPOにかかわる機会が増えることはとても大事なことであり、実際、NPOとのかかわり方も多様になってきています。

そのなかで、ポイントとなるのは「パズルのように、足りないピースを埋めていく」という考え方ではないかと思います。

自分は何ができる、何がしたい、だけでは消化不良に終わることが多いのではないでしょうか。企業のアルバイトのように報酬で折り合いをつけるというわけにはいきません。でも、足りないピースを私が埋められる、あるいは埋められる人を知っている、埋める方法を知っている人を知っている、そうやってつないでいくと、無限にやれることは広がっていきます。そして、なによりも、その活動がコミュニティに大きなインパクトを与えることにつながるかもしれません。

 

ひとりの困ったをみんなの困ったにする

私は、NPO活動は「ひとりの困ったをみんなの困ったにする活動」だ、という言葉ををよく使います。これは、吉田知津子さん(毎日興行取締役、元NPO 法人ハンズオン!埼玉 副代表理事・広報プランナー)に教えていただいた言葉です。

市民活動だからこそ助け合える。行政はみんなの困ったを解決するのが仕事だから、ひとりの困ったになかなか手が出せないかもしれない、そこを市民が助け合い、いずれ、施策として必要だということをわかってもらう。それが市民活動の意義だと私は考えています。そういう市民活動(NPO活動)に関心をもってくれる10代、20代の方が増えることを願っています。

 

人との出会いが原動力

その後の懇親会では中川さんとも情報交換をさせていただきました。ちょうどその1週間前に、島根、鳥取に視察に行っていたのですが、鳥取でこのような学生さんたちの活動が展開されているとは知らなかった、次回はぜひお訪ねしよう、と思いました。やはり、「人」との出会いがイノベーションを生み出す原動力なのです。

NPOキャンパスがその機会になった…という若い方もいらっしゃるかもしれません。

2025年度の開催も決定しているようです、参加者募集中ですのでぜひご覧ください。

▼ NPOキャンパス2025はこちら