寄付をください、と言いにくい理由
さまざまなNPO団体様からのご相談を受ける中で、よく聞くのが「寄付をくださいと言いにくいんです」ということ。
かつて、ある団体の理事でファンドレイジング担当のAさんからもお聞きしたことがあります。Aさんは、大学生のころボランティアとして活動にかかわって、そのまま有給職員となり10年。NPO活動の十分なキャリアをもっているといえます。「なぜ?」と聞いてみると、寄付から団体の家賃や管理費、まして自分を含めた人件費に使われるということが言いにくい一番の理由のようです。
ボランティアで活動に参加しているころは、自分が少しでも役に立つことがうれしくて、新しい世界を知ることが刺激的で、新しい価値観を共有できることが楽しくて、毎日夢中で活動に参加します。そのうち、熱心に活動に参加してくれるし、団体への貢献度も高い、有給でやってほしい、と請われる…という流れ。このようにしてボランティアからNPO職員になった方は多いのではないでしょうか。
Aさんも大学生で就職活動を行っているとき、当時の理事長から声をかけられたそうです。ほかにやりたいことがあるわけではないし、役に立てるなら、と思って飛び込んだNPOの世界。
Aさんの団体は、年間5000万円規模の活動をしている、かなりしっかりした団体です。それでも、寄付をくださいとは言いにくいというのです。立派に地域の課題を解決する事業を行い、住民の皆さんに喜ばれているにも関わらず…。
良いことは、ボランティアで、手弁当でやるもんだ。さらには、経費をかけられないからアウトプットがダサくなっても仕方ない。それは間違っていると私は思います。もちろん、全員がボランティアで、ミッションを達成し、うまく運営できている団体もあります。それは、すばらしいことです。否定することでは決してありません。
でも、より効果の高い結果を出すためには経費がかかるのは当たり前。そして、高いパフォーマンスを発揮するプロを雇うには、人件費の負担があって当然のことだと思います。
では、NPOのプロとはどんな人を言うのか。私はその最大のスキルは「コミュニケーション」だと思います。
人と人をつなぐプロ、寄付者・支援者をつなぐプロ、ボランティアをしたい人と活動の場をつなぐプロ。プロだからこそ、活動の輪を広げ、質を高めていくことができ、結果につなげることができる。
プロなんだから、堂々と寄付や会費や助成金をください、と言っていいのです。もちろん、言う側にNPOのプロとしてメシを食う覚悟が必要なのは言うまでもありません。
でも、社会の課題を解決したい、というぶれないミッションとビジョンがあるのなら、広く世の中に呼びかけ、たくさんの人に支援する機会を提供しなくては、という気持ちになるはず。
勇気を出して言ってみませんか?「寄付をください」と。きっと、新しい世界が広がるはずです。
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この記事は、2012年3月にソノリテのブログに掲載したものを再編集したものです。
さて、2024年の現在、この記事から12年が経ちました。Aさんは、いまや押しも押されもせぬ中間支援団体の事務局長。くわえて全国的なNPOの理事も引き受けています。
この12年の間に、多くの自然災害があり、また高齢者や子どもの困窮者の課題も顕在化し、それらを支援する団体が多くの寄付を集めています。日本の寄付のマーケットは10年前の2.5倍、1兆2000億円と言われています。しかし、アメリカの寄付市場は34兆5000億円だそうですから、まだまだ寄付の文化が根付いているとはいえないようです。それでも、Aさんはしっかりと寄付を集め、そして多くのNPOのファンドレイジングをサポートしています。
「寄付をください」と、言いにくいと感じている方は今でも少なからずいると思います。一方で、堂々と、「寄付をください」とお願いをし、活動をPRできるNPOも増えています。
勇気をもって、「寄付をください」と言えるような仕事ができていますか?
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