企業寄付から個人寄付へのシフト
写真をご覧ください。私が出張でよく利用しているから、JALの飛行機を載せているわけではありません。よく見ていただくと尾翼の横あたり、「We support UNICEF」と機体に書かれています。気付いていましたか?
国連機関のUNICEF=国連児童基金は、すべての子どもの命と権利を守るため、最も支援の届きにくい子どもたちを最優先に、約190の国と地域で活動しています。その活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や、各国政府からの任意拠出金でまかなわれています。日本ユニセフ協会は、そのUNICEFへの寄付金を集める国内委員会です。
これからご紹介するのは、2002年、私が世界の子どもにワクチンを日本委員会(JVC)の職員だったころ、JVC副理事長の東郷良尚さんから教えていただいたエピソードです。
日本ユニセフ協会が個人寄付を増やすために取り組んだこと
東郷さんは、かつて日本航空(JAL)から日本ユニセフ協会に転職し、後に副会長になりました。東郷さんが日本ユニセフ協会に移ったころ、協会の収益は、経団連1%クラブからの寄付が中心で、個人からの寄付はほとんど無かったそうです。東郷さんは企業の業績に左右されるものに依存しては思うような募金活動ができない、個人寄付を増やさなければならないと考え、1年間、国連UNICEFへの拠出を止めて、その費用をデータベースの構築にあてました。そして、個人宛のDMの展開、WEBからカード決済や口座引き落としできるシステムの導入、マンスリーサポーター制度の導入などのファンドレイジング策を次々に導入しました。※1%クラブ…パーセントクラブとは、経常利益や可処分所得から一定割合を社会貢献活動に拠出しようという運動・団体。経団連には経団連1パーセントクラブがある。
その結果、現在、日本ユニセフ協会は国連UNICEFへの拠出は全世界で第2位の募金団体にまで成長しました。2023年度の寄付収入は306億円だそうです。
大手企業からなる経団連から、毎年社会貢献としてある程度まとまった額の寄付を受け取っているだけのほうが、どれほど楽だったでしょうか。データベースの構築には費用がかかりますし、担当部門にとってはたいへんな仕事です。さらにはDMを打つと、寄付は増えますが、同時に問い合わせも増えます。クレームも受けることがあるでしょう。まして、寄付の文化が醸成されていないといわれている日本で、欧米と同じファンドレイジングが通じるのか、迷いもあったのではないでしょうか。簡単な決断ではなかったと思います。
それでも東郷さんは、「お金が無ければ、世界の子どもたちは救えないんだ」と、日本ユニセフ協会の基盤を築いていかれました。今では、企業からのタイアップ寄付などもありますが、個人からの寄付が83%に上るそうです。
私がNGO活動で最初にデータベースの構築に取り組むことができたのは、当時、JCV副理事長だった東郷さんの後押しがあったからこそと感謝をしています。そして、立場や団体の規模が違っても、非営利組織はこの事例から大事なことを学べると思います。
どんなときでも協力してくれる支援者を
先日、あるオルタナティブスクールの理事長から、こんな話を聞きました。とある新電力の会社が、寄付つきプランを作り、その寄付先に私たちを選んでくれました。その電力会社のプランに切り替えてもらうように営業をすれば、楽に大きな寄付が入ってくるんです、これで個人のマンスリードナーを増やすよりはずっと楽に寄付が集まりそうです、と。
その電力会社が、企業努力でNPOへ寄付をしていただく仕組みを作られたのは素晴らしいことです。そして、寄付先に選んでいただいたのも、活動を頑張ってきたからこそで良かったなと思います。でも、「だから個人ドナーを募る努力をしなくていい」というのは違うのではないでしょうか。マッチング寄付などで企業さんからいただける寄付は大きなものです。でもタイアップをしてくださる企業の業績や、景気、あるいは世界情勢などに左右されることは想像に難くありません。そういったものに依存するのではなく、どんなときでも団体のために協力してくださる支援者様を、コツコツ集めてコミュニケーションをとっていく、その努力を忘れてはならないと私は思います。
supportの意味
We support UNICEF. JALの機体に記された言葉は多くの個人の目に留まり、知ってもらうことにつながるでしょう。認知度を上げるために企業が協力した素敵な事例だと思います。「support」という言葉は、資金的な支援だけを意味するのではなく、多くの支援者に認知してもらうことに協力している、その証なのです。
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◆ 日本ユニセフ協会の収支報告はこちらからご覧になれます。
◆ 個人ドナーとの関係構築に、支援者管理データベースは不可欠。ソノリテの支援者名簿管理プラットフォーム ぼきんとん について、詳しくはこちらをご覧ください。