NPO法って?

特定非営利活動促進法、いわゆるNPO法、20年前に議員立法で成立した歴史に残る立法活動だったのですが、その成立の経緯をご存知の方は、今ではNPOで活動をしている人の中でも少数派になってきています。

1995年の阪神淡路大震災で、ボランティアが組織を作り自主的に支援のネットワークが生まれ、行政が復興するまで一定の公共サービスを担うことが証明され、その価値が認められたことをきっかけに、市民活動にも法人格を与えようとNPO法の法制化が進んだと言われていますが、非営利活動の歴史を振り返ると、ベトナム戦争で大量に発生した難民の支援など、かなり前からNGOが活躍をしてきました。

私が最初に働いていた「NPO法人世界の子どもにワクチンを日本委員会」も、1993年から任意団体として募金活動を行い、ミャンマーをはじめとする途上国の子どもたちの予防接種を支援する活動を行っていました。

たとえば、ワクチン委員会は任意団体で、もちろん公益法人のような税の優遇措置もなく、団体の信頼性の担保はどこでするのか?というような状態が長く続いたにも拘わらず、世界中で予防接種を受けることができないために命を落としている子どもが1日6000人、という事実、それを国連や政府だけの力に頼らず、民間人としても隣の人を助けるのと同じように、人道支援を行おうという呼びかけに応じてくれる多くの市民がいることを、目の当たりにいたしました。

さて、立法の話に戻ります。
第1条、「この法律は、特定非営利活動を行う団体に法人格を付与すること並びに運営組織及び事業活動が適正であって公益の増進に資する特定非営利活動法人の認定に係る制度を設けること等により、ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与することを目的とする。」とあります。

ここで、特筆すべきは、「市民が行う自由な」社会貢献活動、という言葉です。
最初、NPO法は、その法律の名前も「市民活動促進法」になると誰もが思っていたそうです。ところが、議員立法で進めることに同意がとれ、国会の審議にかけられるときに、一部の議員から「市民活動」は「反政府活動」のようにとられかねない、という声があり、名前を変えなければ国会は通さない、というやり取りがあったと言います。

超党派の議員連盟でも熟考された結果、特定非営利活動、というよくわからない名前ですが分野を特定したNON Profit 活動に法人格を与えることになりました。その代わり、第1条に市民が行う自由な社会貢献活動、という文言を残すことに合意を取り付けたそうです。

この立法時に中心となって当たってくださったのが、堂本暁子元千葉県知事をはじめとする自社さの連立政権の時の政治家のみなさんです。

そして、私がワクチン委員会の後に所属した、NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会の松原氏、茨城NPOセンター・コモンズの横田氏たちは地域の声を国会へ届けようと、議員会館を回って政治家のみなさんに個別に説得にあたったとのことです。

さて、20年たった今、市民が勝ち取ったNPO法は十分に活用されているでしょうか?
2011年の東日本大震災では、寄付元年ともいわれ、15歳以上の日本人の75%が寄付をしたとのデータが出ています。またその後も毎年のように自然災害が発生し、そのたびに多くのボランティアが現場にかけつけ支援活動を行っている様子や、寄付を募ると緊急募金として多額の寄付が集まるということを、私たちは目の当たりにしています。

新聞などでもNPOが取り上げられることが多くなり、最近はテレビドラマでもNPO法人や公益法人が出てくることも多くなりました。

NPO法は市民活動を行うための道具、だとすると道具はそろったので、使う私たちのスキルが上達しているか?そのような視点で市民活動を考えると、また気づきがあるかもしれませんね。