ファシリテーションが会議・組織・社会を変える!~第14回・会議における「炭火のおこしかた」を極める!(その3)
▼「開いた質問」と「閉じた質問」を使い分ける!
次に、「問う」姿勢、すなわち「発問」の技術について取り上げます。
すでに確認した通り、進行係は、話しあいの内容そのものについては、メンバーにゆだねます。アイデアや意見を引き出すのが進行係の仕事であり、したがって進行係の発言は、そのほとんどが「問いかけ」という形になります。
「問いを発する」というと、私たちは真っ先に「相手から情報を得るための問い」をイメージしますが、これはいわば「自分のための発問」です。しかし、情報を得るだけが発問の機能ではありません。皆さんも経験がありませんか? 「具体的にいうと、どうなりますか?」という問いによって考えを明確化することができたり、「ポイントはどのあたりでしょう?」という問いによって混乱した頭を整理することができたり、「この問題を○○と捉えると、どのようなことがいえるでしょう?」という問いによって違う発想でものごとを考えることができるようになったり。そう、このような「相手のための発問」、そして、私たちはいま何を考えるべきなのか、私たちにいま足りない情報は何なのかを適切に見極め、そこを端的に訊くような「みんなのための質問」をすることで、議論を活性化することが可能になるのです。
問いを発する際には、「相手が答えやすい問いを投げかけること」が大切です。では、どのような問いが「答えやすい問い」なのか? ここでは、「むすんでひらいて」と「ヒトからコトへ」という2つのポイントで整理してみましょう。
まず「むすんでひらいて」です。問いには、大きく分けて「開いた質問(オープン・クエスチョン)」と「閉じた質問(クローズド・クエスチョン)」があります。「A案について、どう思いますか?」のように、どのようにでも答えられる問いが「開いた質問」であり、「B案とC案、現時点ではどちらがよりしっくりきますか?」、「D案に賛成なのですね?」のように、特定の一言や「はい、いいえ」で答える問いが「閉じた質問」です。この両方を上手に使い分けることで――むすんでひらいてを繰り返すことで――、意見を引き出していくのです。
たとえば、ともすると進行係は、何とかの一つ覚えのように、「原案について、どうですか? 何か意見はありませんか?」と繰り返してしまうことがあります。こういう漠然とした質問をされると、多くの参加者は、「『何か』といわれてもねえ……」と、考えること自体をやめてしまったり、逆に「何を話してもOKなんだ!」とばかりに、どんどん話がずれていってしまったりしがちです。そこで試しに、少し閉じた質問を投げかけてみましょう。
「Aさん、原案への納得度をパーセンテージで表すと、どのくらいですか?」
「うーん、80パーセントくらいですかねえ」
では、少し開いてみましょうか。
「となると、20パーセントの減点分は、どのあたりに原因があるのでしょう?」
「そうですねえ。……確かに、やってみればその効果は高そうですが、本当にできるのだろうか、という疑問があるのです」
もう一度、閉じてみます。
「なるほど、実現可能性を高めるような検討が必要、ということですかね?」
「はい」
開いてみましょう。
「では、どのような工夫をすれば、実現可能性が高まるでしょう?」
……と、このような問いを投げかけていけば、「皆が下を向いて黙ったまま」ということはなくなると思いませんか?(つづく)
徳田 太郎(とくだ・たろう) 株式会社ソノリテ パートナー・コンサルタント
1972年、茨城県生まれ。修士(公共政策学)。
2003年にファシリテーターとして独立、地域づくりや市民活動、医療や福祉などの領域を中心に活動を続ける。
NPO法人日本ファシリテーション協会では事務局長、会長、災害復興支援室長を経て現在はフェロー。その他、茨城NPOセンター・コモンズ理事、ウニベルシタスつくば代表幹事などを歴任。
現在、法政大学大学院・法政大学兼任講師、東邦大学・文京学院大学非常勤講師、Be-Nature Schoolファシリテーション講座講師などを務める。
主な著書に『ソーシャル・ファシリテーション:「ともに社会をつくる関係」を育む技法』(鈴木まり子との共著、北樹出版、2021年)。
*本ブログは、『ファシリテーションが会議・組織・社会を変える』(茨城NPOセンター・コモンズ、2013年)に加筆修正を行ったものです。