市民と国会をつなぐ「政策提言」を仕事にする人~関口宏聡さん~

やさしいほうの世界をつくる人々、今回はNPO法人セイエンの代表理事、関口宏聡さんをご紹介します。

関口さんの仕事は、政策提言です。

AIで調べてみると、政策提言とは「ある課題に対する具体的な政策や取り組みを、政策決定者(政府、議会など)に対して提案すること」。

似たような言葉で、ロビー活動があります。ロビー活動を調べてみると、「特定の団体や企業などが、政府や議会に働きかけて政策決定に影響を与えようとする活動」とのこと。

関口さんのお仕事は、市民活動が課題解決に向かって取り組んでいるときに、前例が無かったり法律が整備されていないからできない、あるいは優遇されないという状態を、実態に合わせて改正してもらうための提言、といったところでしょうか。

実は私が、シーズ・市民活動を支える制度をつくる会、に所属していたとき、半年ですがペアを組んで仕事をしていました。あるとき、税理士の脇坂さんと関口さんと3人で夕食を食べていたときに、認定NPO法人が増えないのはPST(パブリックサポートテスト)がわかりにくいためじゃないか、3,000円以上の寄付者が100人以上いればもうPSTクリア、というくらいシンプルにしないと認定NPOは増えないよね、という会話から、現在の絶対値基準の提言につながりました。

日本ファンドレイジング協会ができる前年、NPOのファンドレイジング力を高めることを目的に、ファンドレイジングネットというポータルサイトを二人で担当していたこともあります。NPOも企業や行政と対等に信頼性や資金力も高めていかなければならないと、様々なスキルやファンドレイジングの事例を学ぶため、メルマガの達人やアメリカのNPOの事例を紹介する記事をアップしていました。今だから自画自賛しちゃいますが、セキとエザの掛け合い漫才のようなメルマガはなかなか好評だったと思います!この事業がのちにファンドレイジング協会の立ち上げにつながります。

 

シーズという団体やシーズが担ってきた仕事については別の機会に書かせていただこうと思いますが、2021年にシーズの後継団体であるNPO法人セイエンがスタートします。私(江崎)は最初の会員に声をかけていただいて以来、一緒にNPOの制度等についての勉強会を行っています。昨年は神山の視察を兼ねてセイエンメンバーで合宿を行いました。

市民活動の一つの重要な役割は、政策提言ができることにあると思っています。私たちの暮らしの中の課題は常に新しく変化していて、それに対して当然ですが法律は遅れている。たとえば、今でこそフリースクールやオルタナティブスクールといった様々な形で子どもたちが学んだり居場所として集う場が認められていますが、25年前、学校に行けない子どもが行くフリースクールの認知度や理解度はほとんどなかったのです。けれども、実際に必要としている子ども(現場)がいて、それをサポートする大人たちが、時にボランティアで支えている、そういう現場をNPOの多くが担ってきています。実績、と言われたりしますが、そういう活動が先にあって、その実態を理解してもらうことで、初めて法律が改正されていく。そういう場面に私も何度となく立ち合うことが出来、それこそが市民社会のありようではないか、と思っているのです。

こう説明するとイメージしていただけるかと思うのですが、しかし政策提言活動は一般的に理解してもらうことが難しい、ましてそれを仕事にするなんて、本当に難しいことです。近年は、自然災害も多い中、被災地でも法が整備されていないためにいろいろな理不尽なことが起きています。そういう事例を積み重ねて、議員のみなさんにわかりやすく、そして裏付けを持ったデータを提供し、立法につなげていただく。とても大事な仕事ですが、そこに価値、つまり対価を頂くことが難しい仕事です。そのような仕事を20年にわたり担っている関口さん、NPOだけでなく市民社会にとって頼れる存在です。

先日、オープンソノリテ会で、関口さんに2025年度のNPO関連予算の解説をレクチャーしていただきました。各省庁では毎年NPO関連予算というものを計上しています。そして、資料は一般公開されています。しかし資料を読んだだけでは実際に私たちの活動にどのようにかかわるのか、使える資金があるのかなどはわかりにくいですし、そもそもそんなことが公開されているということを知らないNPOの方も多いのではないでしょうか。けれども、各省庁のNPO関連予算の内容を知ることはNPOが直接助成金や補助金を得る機会になるだけでなく、国の政策の方針を理解することでもあり、NPOが今後の活動の方向性を考えるうえでも大変参考になることなのです。

セイエンでは、これからの市民社会の将来像についてよく話し合っています。政策提言ができる人材を育てていかなければいけない、シーズや関口さんがやってきたことを、職人技で終わらせないようにしなければ。そのための仕組みや仲間づくりに少しずつですが取り組んでいるところです。また、近年、若い世代の人たちからのNPOを立ち上げたいという相談が増えているとのこと。関口さんいわく、最年少の相談は小学校3年生だったとか。その少年は、こういう活動がしたい、こういうメンバーでやろうと思っている、どういうふうにしたら作れるのか、とものすごく具体的な相談だったそうで、大人顔負けです。

ソノリテが目指す、やさしいほうの世界に向かっていくために、セイエンの活動はいわば両輪、これからもお互いに協力し、そして切磋琢磨しながらほしい未来を作っていきたいと思っています。これからも、よろしくね。

神山合宿、アーティストインレジデンスの作品展示を視察するため山歩き。学生時代は環境活動のNPOに所属していたそうです。

WEEK神山でNPO交流会、神山のさまざまなNPOやまちづくりをしているメンバーに囲まれて

セイエン事務局を支える、森さんと荻原さんと。ソノリテ神山サテライトオフィス前にて