山下里加さん~アートプロデュースと市民活動の親和性

3月9日、「どんどこ!巨大紙相撲南国場所」というイベントが開催されました。場所は高知県南国市の障がい者支援施設「南海学園」です。今回で2年目となるこのイベントに京都芸術大学教授でアートジャーナリストの山下先生と一緒に応援に行ってきました。
やさしいほうの世界を作る人々、今回は、神山をきっかけに出会った、頼れるお姉さん、山下里加さんをご紹介します。

***   ***   ***   ***

社会福祉法人のアート活動

南海学園を運営する来島会さまは「ぼきんとん」や事務代行サービスをご利用いただいているソノリテのクライアント。愛媛県今治市と高知県南国市で障がい者支援等を行う社会福祉法人です。
来島会さまは、これまでも障がい者のアート活動に積極的に取り組んできてこられ、アールブリュット展を毎年開催しています。けれども、法人として障がい者のアート活動をどのように展開していくのか、特色を出すにはどうしたらいいのか等、いろいろな悩みをお持ちとのことで、専門家のアドバスを受けてみたいというお話があり、以前から親しくさせていただいている、京都芸術大学アートプロデュースコース教授の山下さんに今治に一緒に行っていただけないか、とお誘いしました。

※アールブリュット:フランス語で「生の芸術」。既存の美術教育や流行に左右されず、作者自身の内側から湧き上がる衝動のままに表現された芸術作品を指す。日本では知的障がい児・障がい者が中心的な制作者として注目されている。

巨大紙相撲イベントと地域連携

山下さんが四国に来るタイミングで今治にご同行いただき、各施設のアートの取り組みをご覧になりました。障がい者のアート活動が専門ではないので適切なアドバイスができるかわからないけれど、とおっしゃいながらも、その日のうちにいくつかの簡単なアドバイスを理事長や担当者の方にお話しくださっていました。担当の職員の方からは、「これでいいのか自信がない中でアート活動を進めていたので、お話をうかがえてとても参考になった。」と喜んでいただきました。そして、理事長に対して、高知に障がい者施設などで面白い取り組みをしているアーティストがいるから会いに行ってみますか?とご提案いただき、アーティストユニットKOSUGE1-16(コスゲイチノジュウロク)の土谷享さんを紹介してくださいました。その土谷さんとのコラボレーションで生まれたのが、この「どんどこ!巨大紙相撲南国場所」です。

屋根の上から手を振っているのが土谷享さん。手前が山下先生(右)と同行してくれた学生の西谷さん(左)。

イベント終了後には、お祝いごとに恒例の餅まきもあり、大いに賑わいました。障がい者支援施設はともすると閉ざされてしまいがちな場所。でも、このような地域の方たちが参加して作り上げるイベントを開催することで、ご利用者様とそのご家族、職員の皆さんが地域の方とより良い繋がりを持つきっかけになったと越智理事長や矢野施設長も喜んでいらっしゃいました。

  • イベントの様子はRKC高知放送のYou-Tubeでもご覧いただけます。
  • 昨年の「第1回どんどこ!巨大紙相撲南国場所」の様子はこちら。執筆してくれたのは、今回もご一緒した西谷さんです。

神山町との出会い

私と山下さんとの出会いは、初めにお伝えした通り神山町。滞在先としてお世話になっている岩丸家でご一緒したことが始まりでした。

そして、山下さんが神山町と出会ったのは、2008年。ジャーナリストとして雑誌「地域創造」で神山アーティストインレジデンスを取材したことだったそうです。四国の中山間地域における神山アーティストインレジデンスは山の中にランドアートがあったり、映像作品があったりと多彩です。取材を進めて驚いたのは、それらを牽引しているのが町のおっちゃんたちを中心としたNPO法人グリーンバレーの人々だったこと。様々な国のアーティストを町ぐるみで受入れ、創作活動から生活面までサポートをしている町の人たちの力に驚いたそうです。

神山だけでなく、全国の取り組みをライターとして取材してこられたこともあり、山下さんの視点、視座は常に参考になるし、地域づくりを俯瞰して御覧になっていて私に見えていなかったことを教えてくださいます。

山下さんは、神山町と出会って以来、ゼミの学生さんたちを連れて度々神山町を訪れていますが、学業や就職活動、ときには恋愛に行き詰まり悩める学生を神山に送り込むと、元気になって帰ってくるのだそうです。

岩丸さんと、ライターの杉本恭子さんと、山下さん。京都にて。

ソノリテとのつながり

山下さんは京都芸術大学のアートプロデュースを学ぶコースで教鞭をとっています。展覧会の企画やアーティストのプロデュースにおいてマネタイズは欠かせない技術。山下先生はNPOのファンドレイジングを知ることに意義があると考え、インターン生の受け入先としてソノリテに声をかけてくださいました。NPOをバックアップするソノリテは学生さんにとって学びが多いというのです。これまで、ソノリテで3名のインターンを受け入れさせていただきました。

また、ゲスト講師として講義に呼んでいただいたこともあります。学生の皆さんがソノリテについてリサーチしてくれて、私を前に、ソノリテはこんな会社、江崎礼子はこういう人、というプレゼンしてくれ、私自身が気づいていない切り口でキャッチコピーを作ってくれるというとてもうれしい経験をしました。2年前には神山町でゼミ合宿を企画され、ご一緒させていただいたことも思い出深い出来事です。

いつか、卒業生がソノリテで働いてくれることもあるかもしれない、と期待しています。

アートの力と市民活動

「芸術」は、実は一番苦手と思ってきた分野でした。音楽はピアノを習っていたこともあり身近だったのですが、絵を描くとか作品を作るとか、表現活動は自分には縁遠い分野だと思い込んできました。でも、山下さんとの出会いによって、今では美術館に行くことがとても楽しみになりました。「アート」の鑑賞方法やその力、特にNPO活動や地域づくりにおいて、理論だけでなく、アート活動的な動きが人と人とをつないだり、イノベーションを起こすきっかけになるということを感じさせていただいたからかもしれません。そして、NPO活動において、アート、つまり創造的な発想でものごとを進めていく技術は不可欠だと思います。これからも、アートプロデュースと市民活動、ともに刺激をし合いながら、いろいろな活動現場でご一緒できることを楽しみにしています。

***    ***    ***   ***

  • 社会福祉法人来島会さまについては こちら
  • アーティストユニットKOSUGE1-16については こちら
  • 神山アーティストインレジデンスについては こちら
  • ぼきんとん ソノリテの支援者名簿管理プラットフォーム については こちら