韓国 忠北大学の学生さん 来訪

去る7月2日(火)、ソノリテの木場オフィスに韓国から8名の学生チームが来訪しました。ソノリテの株主のおひとりで、創業当時からの応援者である根本真嗣さんからの紹介です。

根本さんは、韓国忠北大学社会科学部で教鞭をとっていらっしゃいます。今回、その教え子を含む学生さんたちが、東京でブランディングを学ぶスタディツアーを企画したと連絡をもらい、ソノリテの江崎、黒田、わたくし小林の3名でお目にかかることにしました。

忠北大学は、ソウルから車で約2時間の距離にある国立総合大学。多種多様な専攻課程を設けている大学の特徴を表すかのように、今回訪れた8名の専攻バックグランドも、経済学科、経営学部、ドイツ言語文化学科、植物医学科と実にさまざまでした。

学生さん8人とソノリテのスタッフ。

そんな彼らは、各自の専攻を超え、マーケティングやブランディングに共通の興味を持つ者同士の集まりとしてチーム・ブレンダーと名付けたサークル活動を展開しているとのこと。事前に連絡をもらっていた関心事のひとつが、日韓における社会的企業(ソーシャルビジネス)をめぐる制度環境の違いでした。韓国では、「社会的企業」をひとつのカテゴリーとして公的に資金補助するスキームがあるそうですが、日本にそういったしくみはありません。一方で、寄付や会費、補助金・助成金、収益事業など財源のバランスをとりながら運営するNPOや社会起業家の挑戦を、資金面やスキル面でサポートする民間発のさまざまな取り組みがあります。そこで、そうした事例紹介も含め、ソノリテの事業と日本におけるNPOの位置付け、また、神山のユニークな地域づくりなどについて、お話ししました。特に神山については最近韓国語でも書籍が出版されたことを伝えると非常に興味を持ってくれました。

ソノリテのノベルティとあわせて、久遠チョコレート(https://quon-choco.com/)をお土産に差し上げました。ハイセンスなブランディングで障害者雇用の枠を超えて成功している、ソーシャルビジネスの好事例としてご紹介するととても喜んでいただけました。

なぜ、彼らがそういったことに興味を持つのか。その理由の一端がわかる印象的な会話が、ひとしきり話した後に出てきました。ランチをご一緒しながら、卒業後の話題になった時のことです。メンバーの一人で日本語通訳も担ってくれた李さんは日本に来て就職したいのだそうです。特に多業種と接点を持ちやすい商社や金融のグループ企業に興味がある様子で、その理由を聞くと、日本は韓国より一歩先に高齢化を経験している、そこで高齢社会を前提とした社会経済について経験を積み、いずれは自国に持ち帰って役立てたいとのことでした。

確かに韓国は、2025年には60歳以上の高齢者の割合が21%を超える「超高齢化」を迎える見込みです。問題はそのスピードが日本をはるかに上回る急激なものであることだそうです。成人したばかりの彼らにとって、その重みははかり知れないものかもしれません。

李さんの興味は、単にシニア向けマーケットを開拓したいというようなことではなく、社会全体をとらえてどう経済活動を維持・発展させられるかを意識しているようでした。彼らよりも上の世代なら、そのような問題意識は、ビジネスパーソンというよりも公務員や政治家を目指す人が抱くものに近いと感じるのではないでしょうか。他にも、商品のブランディングについて話していた場面で、児童養護施設で古着再生によるリテール事業に関わっていると話してくれたメンバーもいて、彼らにとってソーシャルであることとビジネスであることは、私たちが既存の価値観で捉えるよりもずっと境界線のない世界なのかもしれないと思わされました。

個々の政治情勢の違いはあれど、東アジアには共通の社会課題があります。少子高齢化やそれに伴う社会経済インフラの見直しはそのひとつ。若い世代だからこそ率直に物事に共感し、またその共感を広げる手段を敷居低く持ち合わせているのかもしれません。そんな希望を感じさせていただいたひとときでした。

(担当:小林)