ファシリテーションが会議・組織・社会を変える!~第22回・「会議の事後管理」を極める!(その1)

さあ、話しあいはようやく結論まで到達しました。「おつかれさまでした!」と散会宣言をしたいところですが、まだまだ、重要なことを忘れています。「決して動かず」を防ぐためには、「最後の一押し」が必要なのです。
「あやまちは安き所になりて、必ず仕ることに候」。『徒然草』に出てくる木登りの名人は、弟子が地上あと少しの安全なところまで降りてきたときに初めて「気をつけて降りろよ」と声をかけました。会議の「あやまち」も、皆が安心しかけている終了間際にひそんでいることが多いのです。
そこで、会議の締めくくりとして、「行動計画の作成」と「進捗状況の管理」という2点について確認したいと思います。  

▼「誰が、何を、いつまでにやるか」を明確にする!
まずは「行動計画の作成」です。会議をお開きにする前に、進行係は忘れずに次の項目を確認しなければなりません。

・この話しあいで、何が決まったのか(決まらなかったのか)
・次の話しあいまでに必要な行動は何か ・誰がその進捗状況をチェックするのか
・次の話しあいは、いつ、どこで行うか

なかでも重要なのが、「次の話しあいまでに必要な行動は何か」です。考えてもみてください。会議なんて、しょせん「手段」ですよね? 何かをするために話しあっているのですから、本当に重要なのは「話しあいと話しあいの間の行動」であるはずです。
したがって、メンバーが盛り上がっているうちに、「誰が(Who)」、「何を(What)」、「いつまでに(When)」やるのかという行動計画(アクション・プラン)を明確にしておくべきなのです。
ここで思い出されるのは、「会議の事前準備」の項で確認した、議案の3要素です。議題づくりにあたっては、個々の「課題(What)」を「目的(Why)」と「手段(How)」でサンドウィッチにすることで、何について話しあうのかを明確にしました。同じように、行動計画をつくるにあたっては、個々の「残存課題(What)」を「担当者(Who)」と「期限(When)」でサンドするのです。こうすれば、「会議で決まったことが放置される」という状況を、かなりの確率で防ぐことができるはずですよね。
もちろん、この「行動計画」は、議事録の中に明記する必要があります。個々の議題の欄に、「○月○日までに、□□新聞社に対して後援依頼を行う。担当は△△理事。」などと記してもよいですし、議事録末尾に3要素だけを抜き出した一覧表を作成すれば、進捗状況を確認する際に役立つかもしれません。
このように作成した議事録は、可能な限り早いタイミングで、会議出席者、および欠席者にも配布します。遅くとも翌日には、電子メールに添付するなどの形で共有しておくことをおすすめします。とにかく「鮮度が命」です。そして、出席者には内容の確認を、欠席者には(必要に応じて)賛否の確認をしてもらうのです。あらかじめ、3~5日の期限を切っておくとよいでしょう。
そして、内容が確定したら、あらためて完成版を関係者全員に配布します。
なお、理事会の議事録であれば、できれば全会員に公開したいものです。議事録については、多くのNPOの定款では、「作成」についてのみ定めを置き、「公開」までは求めていないと思います。しかし、実行計画までしっかり記載されている議事録が公開されれば、(実態はどうあれ)全会員がその後の進捗を見守ることになりますので、担当者にはほどよいプレッシャーとなり、「決して動かず」を防ぐ大きな力となってくれるはずです。
議事録の公開には、もう一つ、大きな意義があります。NPOの理事は総会で選任されるのですから、選任された理事一人ひとりには、会員の期待に応える責任があるはずです。これを裏返せば、会員には「会議にすら出席しないような理事」、「会議には出席するが、行動を引き受けないような理事」を選ばないようにするという責任があるといえるでしょう。理事会の議事録は、会員がその責任を果たすための重要な判断材料なのです。(つづく)


徳田 太郎(とくだ・たろう) 株式会社ソノリテ パートナー・コンサルタント

1972年、茨城県生まれ。修士(公共政策学)。

2003年にファシリテーターとして独立、地域づくりや市民活動、医療や福祉などの領域を中心に活動を続ける。

NPO法人日本ファシリテーション協会では事務局長、会長、災害復興支援室長を経て現在はフェロー。その他、茨城NPOセンター・コモンズ理事、ウニベルシタスつくば代表幹事などを歴任。

現在、法政大学大学院・法政大学兼任講師、東邦大学・文京学院大学非常勤講師、Be-Nature Schoolファシリテーション講座講師などを務める。

主な著書に『ソーシャル・ファシリテーション:「ともに社会をつくる関係」を育む技法』(鈴木まり子との共著、北樹出版、2021年)。

*本ブログは、『ファシリテーションが会議・組織・社会を変える』(茨城NPOセンター・コモンズ、2013年)に加筆修正を行ったものです。