ファシリテーションが会議・組織・社会を変える!~第26回・ファシリテーションとは?(その3)

▼人や組織の思考や行動、関係性に変化をもたらす!

 さて、このように見てくると、これまでのブログで見てきたような「会議のファシリテーション」は、次のように定義することができるかもしれません。

(会議の)ファシリテーションとは、「複数の人が集まる場において、集まった人々の総和以上の何かが生み出されるよう働きかけ、『問題解決や合意形成の質』と『メンバーの納得度』を高めること」である。

 ただ、ここで注意したいのは、「会議のファシリテーション」は、あくまでも「狭義の」ファシリテーションであるという点です。たとえば、私たちが経験する「話しあい」は、「合意により最適解を導き、問題解決のために行動するためのもの」だけではありません。合意形成を目的とするのではなく、一人ひとりの思いや考えが深まること、新たな視座を獲得することを目的とする話しあいもあります(これについては、後で詳しく見ていくことにします)。

 また、「話しあい」というレベルを超えて、人や組織の活動のあり方や、人と人、人と組織、あるいは組織と組織の関係性に働きかけることで「支援する」「促進する」ことも視野に入れる必要があるでしょう。

 そうであるならば、次のように定義しなおすことができるのではないでしょうか。

ファシリテーションとは、「複数の人が集まる場が、『響きあう関係が醸される民主的な時間』『新しい価値が紡がれる創造的な空間』になるよう働きかけることを通じ、人や組織の思考や行動、関係性にポジティブな変化をもたらすこと」である。

 以下、この定義を頭の片隅にとどめながら、組織を変えていくための具体的な働きかけについて考えていきたいと思います。(つづく)

徳田 太郎(とくだ・たろう) 株式会社ソノリテ パートナー・コンサルタント

1972年、茨城県生まれ。修士(公共政策学)。

2003年にファシリテーターとして独立、地域づくりや市民活動、医療や福祉などの領域を中心に活動を続ける。

NPO法人日本ファシリテーション協会では事務局長、会長、災害復興支援室長を経て現在はフェロー。その他、茨城NPOセンター・コモンズ理事、ウニベルシタスつくば代表幹事などを歴任。

現在、法政大学大学院・法政大学兼任講師、東邦大学・文京学院大学非常勤講師、Be-Nature Schoolファシリテーション講座講師などを務める。

主な著書に『ソーシャル・ファシリテーション:「ともに社会をつくる関係」を育む技法』(鈴木まり子との共著、北樹出版、2021年)。

*本ブログは、『ファシリテーションが会議・組織・社会を変える』(茨城NPOセンター・コモンズ、2013年)に加筆修正を行ったものです。