オープンソノリテ会「子ども支援をとりまく環境〜最新の公的施策とNPO活動の課題」開催報告

去る4月6日(日)、つくば市のむすびつくばにて、オープンソノリテ会を開催しました。本年度のソノリテ15周年企画事業の第2弾でもあります。
ソノリテの周りには、クライアントをはじめ、子ども支援に関わる活動に取り組んでいる方が数多くいらっしゃいます。ちょうどこの春で子ども家庭庁ができて1年ということもあり、子どもの支援を取り巻く環境を、公的なスキームの活用とNPOの現場の課題という両面から考える機会をつくりたいと考えました。
そこで、NPOの制度環境を語らせたらこの方の右に出る人はいないというおひとり、NPO法人セイエンの関口宏聡さんをお招きし、子ども向けNPO関連予算の読み解きを行っていただきました。また、後半には「子どもを取り巻くNPO活動見本市」と題して、ソノリテのパートナーコンサルタント・徳田太郎さんのファシリテーションにより、子どもの活動をしている団体の皆さんから各自の取り組みや課題を紹介していただき、お互いの経験からの気づきや学びを共有する時間を持ちました。

公的助成 ニーズが顕在化している取組みか
関口さんからは、まず、各省庁が直接実施する予算、地方自治体を通じた交付金、独立行政法人などを通じた予算という3つの仕組みの解説とともに、こども家庭庁に限らず、文科省、文化庁、厚労省、環境省など、切り口によってNPOが執行先になり得るこども予算は多岐に渡ることが、事業例とともに説明されました。そして、公的助成金で重視されているのは新規性ではなく、すでにニーズが顕在化していて全国に公平にある課題への取り組みが望ましいとみなされること。対して、民間助成はまだまだ制度化されていない実験的な取り組みも歓迎される傾向にあるという違いも説明されました。同時に、顕在化していないニーズに対しては、市民から行政を動かして交付金を財源とする支援の仕組みをつくっていく方法もあることを事例を紹介しながら説明してくださいました。こうした違うアプローチ方法があることを理解しているかどうかは、ファンドレイジング計画を組み立てる上で大切なポイントになってくるといえます。
助成期間中にこそ取り組みたいこと
そして、「NPOの土を、助成金で肥やす、耕す」という表現で、事業も大事ですが、それ以上に大事なのが組織づくり。どんなにいい事業でも組織基盤がないと長続きがしなくなってしまうので、助成期間中にこそ組織の足腰を強くするのが大事と強調されました。以前、ソノリテのブログでも書いた通り、NPOにとっての資金源は、会費・寄付、自主事業収益、助成金・補助金、委託費と大きく4分類され、それらがバランスよく構成されていることが重要になってきます。関口さんのお話からも、公的助成金の活用方法を学ぶことを通じてこの点を再確認することにつながりました。
子どもを取り巻くNPO活動
第2部では、各地で子どもの支援に取り組む4つの団体に登場いただきました。
NPO法人リヴォルブ学校教育研究所の小野寺哲さんからは、さまざまな理由で学校ではうまく力を発揮できずにいる子どもたちが安心して過ごせるオルタナティブスペース「むすびつくばライズ学園」について、ボランティアから市の公募事業採択を経て市民の憩いの場の一部として広げてきた歩みについて詳しく共有いただきました。
一般社団法人ぴおねろの森の中村龍太さんからは、フリースクールの子ども自身が開発した入室管理システムを活用して、フリースクールのスタッフ間はもちろん、保護者や在籍する学校の校長先生とも子どもたちの入室状況や活動の様子を共有し、チームで子どもの安全、回復、成長を見守る仕組みづくりに取り組んでいることが報告されました。
また、NPO法人みっけの松岡美緒さんからは、ソノリテのサテライトオフィスがある徳島県名西郡神山町での小学生を対象にしたオルタナティブスクール 森の学校の取り組みを紹介いただきました。自然とのふれあいのなかで自分の中から湧き出てくる「好き」や「学びたい」を大切にし、川遊びや畑仕事を通じて生きる力ややさしさを身につけていく活動について紹介がありました。
最後に、認定NPO法人茨城NPOセンター・コモンズの大野覚さんから、地域でセーフティネットづくりに取り組む活動を支える一環で子ども食堂や無料塾のネットワーク化に力を入れていることが紹介されました。
いずれの団体も、めざす目的を達成するために、自団体だけではなく協力者を広げていく、いわば点ではなく面で活動を展開しながら成長していく道筋を示している点が印象的でした。
ディスカッションでは、行政とのコミュニケーションのあり方に関心が集まりました。子ども家庭庁ができて予算自体は増えたものの、国の交付金を積極的に活用しようという自治体はまだまだ少ないこと、自治体の子ども担当部局に地域の市民団体の存在や状況を知ってもらうことがまだまだ必要な状況があるため、NPO側からの発信もますます大事になってくるであろうことなどが話し合われました。また一方で、助成金に頼りすぎず財源を安定化させるためにも、一見大変そうに思える寄付集めが、長きに渡って団体そのものへの応援者をつくることにもつながり、積極的に取り組む価値があることも話題になりました。
ご参加ありがとうございました
ソノリテも、NPOの成長を支えるべくさまざまなサービス展開していますが、今回のNPO関連予算にみられるような非営利セクターの外的環境に改めて注目していきながら、団体のニーズに応えられる存在であり続けたいと考えます。
会場およびオンラインでご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。




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◆ソノリテでは、NPO活動を行っている方とNPOを支援したい方が一緒に学べる勉強会兼交流会として、「ソノリテ会」を開催しています。毎回ゲストスピーカーをお招きして、最先端の情報をお届けするとともに、参加者同士がつながっていける場をつくっています。
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