ファシリテーションが会議・組織・社会を変える!~第1回・はじめに~

「ファシリテーション」という言葉、最近よく聞くようになったり、使うようになったという方も多いのではないでしょうか。

NPO活動だけでなく、企業でも会議のファシリテーションが必要だとか、ファシリテーションがうまくないと会議がなんとなくだらだらして何を決める場だったのかわからなくなるなんてことありますよね。

そこで、今回からソノリテのパートナーコンサルタントの徳田太郎さんにノウハウをご紹介いただく連載を掲載してまいります。

ファシリテーションが会議・組織・社会を変える!その醍醐味をぜひ味わってください。

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旅人が歩いていると、何人かの人が集まって話しあいをしていました。旅人が「何をしているのですか?」と訊ねると、人々はため息混じりにこう答えました。

「会議だよ。NPOの理事会」

旅人が歩みを進めると、また何人かの人が集まって話しあいをしていました。同じ問いを投げかけると、真剣な表情の人々からは、こんな言葉が返ってきました。

「NPOの組織づくりを進めているんだ」

さらに行くと、また何人かの人が集まって話しあいをしていました。旅人が同じ問いを口にすると、彼らは笑顔で振り返り、こう言いました。

「私たちは、NPOの活動を通じて、社会を変えているのです!」

……と、どこかで聞いたようなお話ではありますが*、理事会や事務局に、旅人が出会った最初のグループのような「疲労感」がある組織も多いのではないでしょうか?

*「3人のレンガ職人」という小話が有名ですね。「3人のレンガ職人」では、旅人が出会った1人めの職人は「レンガを積んでいる」と答え、2人めは「壁をつくっている」と答え、3人めは「大聖堂をつくっている」と答えます。

しかし、思い返してみてください。皆さんがNPOでの活動をはじめた頃、理事会などの話しあいの場は、もっとイキイキしてはいませんでしたか? いま、自分たちが話しあっていることは、社会的に大きな意義のある「何ごとか」である。そんな実感はありませんでしたか?

故・市川房枝さんは、「運動は事務なり」という言葉を遺しました。現場での直接的な活動だけでなく、こまごました書類をつくったり、話しあいでものごとを決めていったり、そうした地道な取り組み、間接的な活動こそが、社会を変える原動力に他ならないということでしょう。

そう、理事会や事務局が担っている業務、なかでも中心的な活動である「会議」は、本来はその組織が描くビジョン、その組織が掲げるミッションを実現するための基盤であるはずです。そして、そうであるならば、元気がなくなってしまった会議を変えることは、NPOの組織を変えることにつながり、NPOの組織を変えることは、社会を変えることにつながるはずですよね?

そこで、本ブログでは、まずは「会議」を変えることに取り組みます。理事会や委員会、事務局での会議を、より効率的・効果的なものとするための働きかけを学び、さらにはそれらの会議を、単なる情報共有や意思決定の場に終わらせるのではなく、失われかけているチームワークや、一人ひとりのモチベーションを取り戻す場とするための「かんがえかた」や「ふるまいかた」を、皆さんとともに探っていきます。

その上で、さらに歩みを進めて、「組織」を変えることに挑戦します。人と人とのかかわりを支援・促進する「ファシリテーション」という考え方を通じ、事業や組織を活性化するための方法を探ります。

そして最終的には、「社会」を変えるためのヒントを見つける旅に出ます。ともに集いあい、問いあい、語りあい、聴きあうことで、響きあう関係が醸され、新しい価値が紡がれる。異なりから豊かさがうまれ、希望と知恵が育まれる。そのような場と機会があちこちに生まれれば、必ず社会は変わっていくはずです。そのために私たち自身ができることを、ともに考えていきたいと思います。

このブログは、NPOの理事や事務局の皆さん(特に「組織運営」において悩みを抱えている方々)を主な読者として想定していますので、取り上げる事例は、NPOや市民活動の現場の話が中心となっています。しかし、紹介している「かんがえかた」や「ふるまいかた」は、自治体や企業、病院や学校など、あらゆる組織で応用できるはずです。ぜひご一緒に、会議を変え、組織を変え、そして社会を変えていこうではありませんか!(つづく)

徳田 太郎(とくだ・たろう) 株式会社ソノリテ パートナー・コンサルタント

1972年、茨城県生まれ。修士(公共政策学)。

2003年にファシリテーターとして独立、地域づくりや市民活動、医療や福祉などの領域を中心に活動を続ける。

NPO法人日本ファシリテーション協会では事務局長、会長、災害復興支援室長を経て現在はフェロー。その他、茨城NPOセンター・コモンズ理事、ウニベルシタスつくば代表幹事などを歴任。

現在、法政大学大学院・法政大学兼任講師、東邦大学・文京学院大学非常勤講師、Be-Nature Schoolファシリテーション講座講師などを務める。

主な著書に『ソーシャル・ファシリテーション:「ともに社会をつくる関係」を育む技法』(鈴木まり子との共著、北樹出版、2021年)。

*本ブログは、『ファシリテーションが会議・組織・社会を変える』(茨城NPOセンター・コモンズ、2013年)に加筆修正を行ったものです。