ファシリテーションが会議・組織・社会を変える!~第4回・「会議の事前準備」を極める!(その2)

▼審議の順番は「重要性」と「緊急性」で判断する!

事前準備の2つめのポイントは、「各回の会議の組み立て」です。

NPOの理事会は、1回の会議で複数の議題を扱うのが通常です。しかもそれらの議題は多くの場合、「情報の伝達・共有を目的としたもの」、「アイデアの創造を目的としたもの」、「何らかの意思決定を目的としたもの」、「関係者間の調整を目的としたもの」など、さまざまなタイプのものが複雑に絡み合っているのではないでしょうか。

このように、複雑かつ多数の議題を、限られた時間内(おおむね2時間程度)で扱うには、ちょっとした工夫が必要です。

まず、メモ用紙に、次のような図表を描きます。

縦軸には「重要性」(上にいけばいくほど重要度が高い)、横軸には「緊急性」(右にいけばいくほど緊急度が高い)を置きます。そして、①重要かつ緊急、②重要だが緊急ではない、③重要ではないが緊急、④重要でも緊急でもないという4つの象限をつくります。その上で、次の理事会で話しあわなければならない議題を、それぞれの象限に割り振っていくのです。できるだけ客観的に、そしてすべての象限に同じくらいの数の議題が入るように、「エイヤッ」と当てはめていくのがコツです。

できましたか? できたら、あとは簡単です。議題を、①重要かつ緊急、②重要だが緊急ではない、③重要ではないが緊急、④重要でも緊急でもない――の順番で並べればよいのです。で、④については、議案書(および議事録)には掲載しますが、当日は審議をしないようにします。④に入るのは、おおむね報告事項ですので、情報を共有するだけでよいのです(ただし、メンバーの労をねぎらったり、行為を称賛したりすることにつながる場合は、会議の冒頭で取り上げます。これについては、後に「土俵のつくりかた」の項で詳述します)。

ここでのキモは、②と③の順番、すなわち「緊急度の高い案件」よりも「重要度の高い案件」を先に審議する、という点にあります。「重要だが緊急ではない」という案件は、その組織のビジョンやミッション、中期計画にかかわるものであることが多いのですが、ともすればこれらは「今回は時間がないので、継続審議にしよう」ということになり、しかもそれが繰り返され、どんどん先送りされてしまいかねないのです。

しかし、いうまでもないことですが、NPOはビジョンやミッションでつながる組織です。自らの存在意義にかかわることを先送りにし、目の前の案件に振り回されるばかりになってしまっては、どんどん「あるべき姿」から遠ざかってしまいます。それでは、メンバー一人ひとりが「正しい方向である感」を感じられなくなってしまっても仕方がないでしょう。

ですから、「緊急度の高い案件」よりも「重要度の高い案件」を先に審議する必要があるのです。え? 時間切れになってしまって、急ぎの案件について話しあいができなくなったらどうするのか、ですって? 心配ありません。後ろに「絶対に解決しなければならない案件」が控えていることが、かえって「時間を意識した話しあい」につながるのです。それに、本当に「待ったなし」の案件であれば、理事会の開催を待たずに、たとえばメーリングリストなどで迅速に意思決定するべきですよね。(つづく)



徳田 太郎(とくだ・たろう) 株式会社ソノリテ パートナー・コンサルタント

1972年、茨城県生まれ。修士(公共政策学)。

2003年にファシリテーターとして独立、地域づくりや市民活動、医療や福祉などの領域を中心に活動を続ける。

NPO法人日本ファシリテーション協会では事務局長、会長、災害復興支援室長を経て現在はフェロー。その他、茨城NPOセンター・コモンズ理事、ウニベルシタスつくば代表幹事などを歴任。

現在、法政大学大学院・法政大学兼任講師、東邦大学・文京学院大学非常勤講師、Be-Nature Schoolファシリテーション講座講師などを務める。

主な著書に『ソーシャル・ファシリテーション:「ともに社会をつくる関係」を育む技法』(鈴木まり子との共著、北樹出版、2021年)。

*本ブログは、『ファシリテーションが会議・組織・社会を変える』(茨城NPOセンター・コモンズ、2013年)に加筆修正を行ったものです。