ファシリテーションが会議・組織・社会を変える!~第24回・ファシリテーションとは?(その1)
ここまで、「会議」を変えるためのさまざまな働きかけについて考えてきましたが、実はこれらの働きかけは、すべて「ファシリテーション」という考え方をベースにしたものです。
そこで、「組織を変える」ための具体的な働きかけについて考える前に、まずは「ファシリテーションとは、いったい何だろうか?」「ファシリテーションは、私たちにとって、どのような価値を持つのだろうか?」という根本的な問いについて、簡単に整理しておきたいと思います。
▼何かを支援・促進するすべての働きかけを指す!
「○○とは何か?」を考えるに際しては、おそらく語源に遡るのがオーソドックスな手段でしょうから、まずは、そこから繙いてみたいと思います。
ファシリテーション(facilitation)は、facilitate(為しやすくする)の名詞形です。そしてその語源は、ラテン語の「facilis(たやすい)」に「ate(~する)」を加えたものであるといわれています。ですから、ファシリテーションを日本語にすれば、「為しやすくすること」となるでしょう。辞書には「容易にすること」「円滑にすること」「助長すること」「支援すること」「促進すること」などとあります。
そして、facilitateという語は他動詞ですから、すべて「~を」という目的語を伴います。すなわち、語源的には、対象は何であれ、その何かを支援し、促進するような働きかけのすべてがファシリテーションであるということができます。
ですから、さまざまな領域で、さまざまなファシリテーションが行われており、「○○ファシリテーター」と名乗る方もたくさんいらっしゃいます。試みにインターネットで検索してみると面白いですよ。
▼「プロセス」への働きかけで支援・促進する!
とはいえ、現在もっとも一般的なファシリテーションといえば、「話しあいのファシリテーション」や、「(話しあいを通じた)チームや組織の活動のファシリテーション」であるといえるでしょう。そのため、たとえば次のような定義がなされています。
ファシリテーションとは、
・「中立的な立場で、チームのプロセスを管理し、チームワークを引き出し、そのチームの成果が最大となるように支援すること」である(黒田由貴子さん)。
・「集団による知的相互作用を促進する働き」である(堀公俊さん)。
それぞれの定義については、少し注釈が必要かもしれませんね。
たとえば、黒田由貴子さんの定義にある「中立的な立場で、チームのプロセスを管理」するという言葉。これはいったいどういう意味でしょうか? 対比を用いて考えてみましょう。
ファシリテーター的なかかわり方としばしば対比されるのが、「先生」的なかかわり方です。ここでいう先生とは、そこで課題となっていることがらに対して、具体的なアドバイスができる人を指しています。つまり、解決策(What)を提示する人が先生です。
しかし、ファシリテーターは先生ではない。したがって、ファシリテーターが処方箋を提示することはありません。解決策は、あくまでも当事者が自ら探し出す、あるいは創り上げるもの。ファシリテーターは、「どのような進め方で話しあえば、すぐれた解決策に到達できるだろうか」「どのような雰囲気の中で活動すれば、皆の納得度が高まるだろうか」というプロセス(How)に対して働きかけるのです。
直接的に「What」を扱うのではなく、「How」を扱うことで、側面あるいは後方から支援・促進する。これがファシリテーションであるといえるでしょう。(つづく)
徳田 太郎(とくだ・たろう) 株式会社ソノリテ パートナー・コンサルタント
1972年、茨城県生まれ。修士(公共政策学)。
2003年にファシリテーターとして独立、地域づくりや市民活動、医療や福祉などの領域を中心に活動を続ける。
NPO法人日本ファシリテーション協会では事務局長、会長、災害復興支援室長を経て現在はフェロー。その他、茨城NPOセンター・コモンズ理事、ウニベルシタスつくば代表幹事などを歴任。
現在、法政大学大学院・法政大学兼任講師、東邦大学・文京学院大学非常勤講師、Be-Nature Schoolファシリテーション講座講師などを務める。
主な著書に『ソーシャル・ファシリテーション:「ともに社会をつくる関係」を育む技法』(鈴木まり子との共著、北樹出版、2021年)。
*本ブログは、『ファシリテーションが会議・組織・社会を変える』(茨城NPOセンター・コモンズ、2013年)に加筆修正を行ったものです。