ファシリテーションが会議・組織・社会を変える!第28回・「かかわり」のファシリテーション(その2)

▼共有―共感―共鳴―共創のステップを意識する!

 さて、ではどうすれば、組織の中に対話や討議の文化を育んでいくことができるのでしょうか?

 これまでの経験から、対話や討議においては、基本的に下の図表のような4つのステップがあるように感じています。

最初のステップは「共有」。雑談を除けば、話しあいは「問い」を共有することから始まります。「議題」や「テーマ」と言い換えてもよいのですが、ここではあえて「問い」としました。たとえば、「会員が増えないね」「寄付が集まらないね」というだけでは、雑談(というか愚痴?)で終わってしまいますが、これを「私たちは地域の人々にとってどのような『参加の受け皿』であるべきなのだろうか?」「どのような働きかけがあれば、多くの人々が活動に参加したくなるのだろうか?」という問いに置き換え、それを共有すれば、それだけで対話や討議のモードに変わっていくからです。

 ポツリ、ポツリとアイデアがこぼれはじめたら、それを「共感」をもってしっかりと受け止めます。これについては、後で少し詳しく見ていきたいと思います。

 3つめのステップは「共鳴」です。話しあいの参加者同士がお互いに「受け止めあう」ようになれば、それぞれの思いや考えが響きあうようになってくるはずです。「なるほど、確かに○○だよね……」「それって、××ということかな?」「私たちにとって、□□とは何だろう……」「じゃあ、△△のような場合はどうでしょう?」といったフレーズが出てくれば、響きあっている証拠です。

 そして最後のステップは「共創」です。まさに「三人寄れば文殊の知恵」、協働(collaboration)による創発(emergence)の実現です。

▼もっとも大切なのは「レスポンシビリティ」!

 この「共有―共感―共鳴―共創」ステップを実現するための具体的な働きかけは、これまでに「土俵をつくる」「炭火をおこす」「積み木を組む」「階段をあがる」という切り口で整理し、考えてきたことと、基本的に大きな違いはありません。ここではただ1つだけ、現場の経験から「もっとも大切なのではないか」と思うことのみ、付け加えたいと思います。

 対話や討議のファシリテーションにおいて、もっとも大切なこと、それは「レスポンシビリティ(responsibility)」ではないかと思うのです。

 レスポンシビリティ、直訳すれば「責任」となります。とはいっても、「責任感が重要」ということではありません。

 responsibilityを分解すると、「response(応答する)」+「ability(能力)」となります。つまり、もともと「責任」とは、応答する力、すなわち「呼びかけに応えること」を示す言葉なのです。

 人と人とがかかわるということは、突き詰めれば、「呼びかける―呼びかけられる」という関係に身を置くということです。呼びかけが受け止められなければ、そもそも「かかわり」が生じることはありません。だからこそ、呼びかけに応えることが、ファシリテーターとしての(というよりも人間としての)最初の責任なのではないでしょうか。(つづく)

徳田 太郎(とくだ・たろう) 株式会社ソノリテ パートナー・コンサルタント

1972年、茨城県生まれ。修士(公共政策学)。

2003年にファシリテーターとして独立、地域づくりや市民活動、医療や福祉などの領域を中心に活動を続ける。

NPO法人日本ファシリテーション協会では事務局長、会長、災害復興支援室長を経て現在はフェロー。その他、茨城NPOセンター・コモンズ理事、ウニベルシタスつくば代表幹事などを歴任。

現在、法政大学大学院・法政大学兼任講師、東邦大学・文京学院大学非常勤講師、Be-Nature Schoolファシリテーション講座講師などを務める。

主な著書に『ソーシャル・ファシリテーション:「ともに社会をつくる関係」を育む技法』(鈴木まり子との共著、北樹出版、2021年)。

*本ブログは、『ファシリテーションが会議・組織・社会を変える』(茨城NPOセンター・コモンズ、2013年)に加筆修正を行ったものです。